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統計検定1級の統計応用の人文科学の項目反応理論の過去問を解くための事前知識をわかりやすく解説

項目反応理論

統計検定1級の統計応用で人文科学を選択する方にとって項目反応理論について解説します。

項目反応理論の出題範囲は(2024年の試験前情報時では)浅いので『項目反応理論[入門編]』の第2章までの流れを把握していれば過去問と向き合うことができます。

項目反応理論自体は奥が深くて難解ですが統計検定1級の範囲だと序盤だけでも大丈夫なため、まとめた内容をシェアします。

統計検定1級の項目反応理論の学習の流れ

まずは『項目反応理論[入門編]』を購入しましょう。統計検定1級の項目反応理論の問題を解き切るために必要な情報が序盤で丁寧に解説されているためです。

本書の第1章と第2章の流れを頭に入れます。その際になぜこのモデルを導入する必要があるのか?この係数はどのような意味があるのか?など丁寧に読み進めましょう。

次に統計検定1級の過去問を購入します。項目反応理論自体の出題頻度は低いですが、内容は深い部分までは問われない感じですので受験時に登場したら是非とも選択できる状態にしておきたいですね。

日本統計学会公式認定 統計検定 1級 公式問題集[2012〜2013年]
日本統計学会公式認定 統計検定 1級・準1級 公式問題集[2014〜2015年]
日本統計学会公式認定 統計検定 1級・準1級 公式問題集[2016〜2017年] 
日本統計学会公式認定 統計検定 1級・準1級 公式問題集[2018〜2019年]
日本統計学会公式認定 統計検定1級 公式問題集[2019~2022年]

上のセットは僕が最も安く揃えた過去問集セットになります。統計検定準1級(合格法はこちら)の学習も同時進行していたので、このような組み合わせとなりました。上のリンクから内容を確認できます。

項目反応理論の考え方

ここでは1つのテストについての分析についての考えを解説します。潜在特性が登場する前までの内容です。

被験者と項目数

試験結果を被験者と項目に関する尺度で考えて行列表示します。その際に正解を1で失敗を0とするとのちの数式の議論で役に立ちます。

通過率(のちに項目困難度のパラメータとして登場)

通過率とは問題の難易度のことです。また分散についてはベルヌーイ分布の考えから算出可能です。

識別力(のちに項目識別力のパラメータとして登場)

識別力はテストの特性を表す指標です。3行目の式は統計検定準1級でも出てきたジャックナイフ法に通じるところがあって面白いですね。

ちなみにデタラメに答えてまぐれで正解する場合もありますよね。その場合の第3のパラメータは次の章で登場しますのでお楽しみに!

単独テストの場合の項目特性曲線

横軸に学力、縦軸に確率の軸をとりテストについてグラフで表現したものになります。正規分布で考えたいため点数を標準化した標準正規得点で考えます。この例では学力層を5層に分けています。また人数が有限なので分布関数などを考える際は経験分布関数となります。項目特性曲線の考え方は項目反応理論の主軸となります。

この結果は他のテストには適応できないので考え方に改良が必要となります。

次からはどのテストにも適用可能となるように潜在特性θを用いた考察を行います。具体的には正規累積モデルロジスティックモデルを扱います。

潜在特性θは統計検定準1級でも登場した因子分析の第1因子に相当する量です。

正規累積モデル

正規累積モデル

このモデルには母数を1種類使う1母数正規累積モデルと、2種類使う2母数正規累積モデルがあります。

1母数正規累積モデル

1母数正規累積モデル

項目jの項目困難度としてパラメータbを採用します。難易度は実数全体を取れますが、基準化された場合は−2から2の範囲で考えることになります。数が大きくなるほど難易度が高くなります

項目困難度別のICCと1母数正規累積モデルの2つの性質

2つの性質の意味を噛み砕いて教えて欲しいです。

小学生の学力と高校生の学力を有する方がいると考えてください。まず1つ目の性質は「小学生と高校生に同じ問題を出したら高校生の方が解ける確率は高い」ということを言っています。2つ目の性質は「小学生が難しいと感じる問題は、高校生も難しく感じる」ということです。2つ目の性質はグラフの平行移動のことを言っています。

なんだか必ずしも成立する性質とは考えづらいですね。

このような疑問を解消するためにさらに母数を増やす必要が生じます。

2母数正規累積モデル

2母数正規累積モデル

項目jに対する項目識別力をパラメータaで表現します。

グラフが平行移動していることにご注意ください。

しかし積分計算が厄介であることには変わりません。これを解消するためにロジスティックモデルが考案されています。

ロジスティックモデル

ロジスティックモデル

パラメータは最後のc以外は正規累積モデルの意味と変わりません。1母数ロジスティックモデルは2母数ロジスティックモデルの下位モデルで、2母数ロジスティックモデルは3母数ロジスティックモデルの下位モデルとなっています。

項目jの下方漸近線をパラメータcで表現しますが、これは疑似偶発水準当て推量母数当て推量などと簡略化されて呼ばれることもあります。

要するに当てずっぽうを格好良く表現しただけですね笑

これで統計検定1級の項目反応理論の問題を解くための素地は出来上がりましたので、実際に過去問を解いていきましょう。

日本統計学会公式認定 統計検定 1級 公式問題集[2012〜2013年]
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日本統計学会公式認定 統計検定1級 公式問題集[2019~2022年]

統計検定1級を目指して頑張っていきましょう!

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志田龍太郎

東京大学修士→30代セミFIRE元数学教諭(麻布高など指導)/アクチュアリー数学,統計検定1級(2024年に再挑戦)/数検1級→高3・漢検1級→教諭時代に合格/ブログ+SNS運営/AmazonAssociates連携

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